<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>

50回の記念大会、『日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯』(賞金総額2億円・優勝賞金3,600万円)大会最終日が9月10日、岩手県八幡平市・安比高原ゴルフクラブ(6640ヤード/パー71)で行われ通算5アンダーで、李知姫が今季初優勝。2位は通算3アンダーのイミニョン、3位は通算2アンダーの東浩子が入った。(天候:曇り 気温:20.7℃ 風速0.9m/s)

限界をつくらない。自らの可能性を信じた。李知姫の優勝劇は迫力十分。16番、ボギーを打って終盤、猛チャージを披露したイミニョンと首位に並ばれた。この時の心境を「残りの2ホール。どちらかでバーディーを獲らないと、プレーオフへも行けない」。迎えた17番で、2.5メートルのバーディーパットを決め再び、単独首位を奪い返すと、最終18番も6メートルのバーディーで締めくくる。「縁がなかった」はずの、日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯で悲願の初制覇を果たす。

最終日は首位タイの最終組だ。しかし、濃霧と2度の雷雲接近で計3時間50分、スタートが遅れた。「勝因のひとつは、コースとホテルが近かったことですね」。李はクラブハウスではなく、「ホテルへ戻ってゆっくりしました。部屋では音楽や、韓国の昔話の朗読を聞いて、時間をつぶしていた。今まで、あまり読書はしていなかったけど、朗読のアプリを発見し、試してみたら、これがいい。私の予想では16番ぐらいまでプレーできれば…。サスペンデッドでもう1日、と思っていた。きょうは、とてもリラックスした気分。いったい、どうしたのだろう、と感じたほどでした」と語った。

人間、どうしても次を考えたくなる。プロゴルファーも同様だろう。でも、李は帰宅することを考えず、今夜も現地に宿泊するつもりでいた。いかに、この試合に賭けていたかがわかる。そんなゆとりも勝利を引き寄せた重要なファクターだった。今季は序盤、ショットの不調に悩まされ、「今年は優勝できるのだろうか」と自問自答の日々。持ち球をドローボールから、フェードボールへ変更した思い切りの良さに、勝利への執念があらわれる。38歳でも、挑戦。また、「どんな時でもミスを恐れない。たとえ、それがダメだとしても、また挑戦すればいい」と闘志をたぎらせた。

公式戦制覇は、2008年の日本女子オープン以来。ツアー通算22勝目は「どうしても欲しかった」という、アジアナンバーワン決定戦だ。「きのうまで、今年の目標は1勝することでした。次は2勝を目指すことになるけど、併せて永久シード(通算30勝)も、です」。テクニックはもちろんだが、試合へ臨むルーティンなど、独自のアプローチは変幻自在だ。なるほど、その思考法にも限界がなかった。