<Photo:Matt Roberts/Getty Images>

2014年、ツアールーキーながら日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯を大会史上最年少で制覇した鈴木愛。

鮮烈な初優勝から2年。2016年にも再び同タイトルを獲得し、今大会をディフェンディング・チャンピオンとして迎える。

弱冠23歳ながらいまや堂々のトッププロに成長した鈴木愛は、前回大会で何をつかみ取り、今大会で何を目指すのだろうか。

──昨年(2016年)の日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯を思い起こしてください。大会前の意気込みは?

前年の大会が予選落ちだったので、それだけは避けようと思って臨みました。ショット自体は悪くなかったのですが、パターの調子が良くなかったので、あまり自分に期待せずやっていこうかなと。

前の週の試合まで1メートルくらいのパットがとにかく入らず、大事なところで外していました。ですから、選手権の週はかなりパッティング練習に時間を割きました。いつもは順手で構えるのですが、それをクロスにして練習するなど、試行錯誤を重ねていましたね。試合に入っても3日目までクロスで、最終日だけ順手でやりました。

──パッティングスタイルはそんなにころころと変えられるものですか?

本当はあまり変えないのですが、悪くなったときだけクロスで練習したりします。試合期間中に変えることはまずありませんから、去年の選手権のときは本当にしっくりきていなかったのだと思います。

──大会初日は首位に5打差をつけられての1オーバーでのスタートでした。出遅れたという意識はありましたか?

それはあまりなかったです。ラフがすごく長かったし雨も降っていたので、イーブンパーくらいで回れれば最高だと思っていましたから。1オーバースタートは自分ではかなりいいほうだなと。

初日はたしかインスタートで、いきなり10番と11番で1メートルのバーディーパットが来て、10番は入って11番は入らず、でした。その後ももう少し長かったりもう少し短かったりすれば入ったのですが、1メートルだけ入らなくて……。あんなに練習したのに、また1メートルが入らないなあと思っていました。考えすぎていたと思います。

──2日目も1オーバーのままスコアを伸ばせませんでしたね?

もう少し伸ばせたかなとは思いましたが、残り2日あるので焦りはなかったです。選手権のような4日間競技は、3日目がキーポイントだと思っているので。

私は4日間競技が好きです。4日あるとゆっくり戦える感じがします。3日間競技は初日、2日目にいいスコアが出ないと3日目には間に合わない。4日間あると初日と2日目がそこそこでも、3日目に伸ばせればいい。4日あると気持ち的に楽に回れます。

──が、その3日目はスコアを落として4オーバー、首位と5打差となりました。最終日は最終組から3組前のスタートでしたね。

3組前だし差もけっこうあったので、優勝は少し厳しいかなと思っていました。一日で5打差はなかなか追いつけるものではありません。しかも最終組はテレサ・ルーさん、申ジエさん、酒井美紀さんという、崩れそうもないメンバーでしたから。それでもラフが長く難しいコースだったので、まだワンチャンスあるかもしれないとは思っていましたけど。

ただ、勝てなくても3アンダーで回りたいという気持ちが強かったです。3アンダーで回って勝てなかったら仕方ないなと思っていました。

──最終日は2番で先にボギーが来ました。気落ちしませんでしたか?

先にボギーが来て展開的には苦しくなりましたが、まだ残りホールもたくさんあったのであまり深く考えませんでした。そうしたらその次のPAR3ですぐにバーディーが来て、これがすごく大きかったです。距離的にも長いパットが入り、まだチャンスがあると思ってすぐに切り換えられました。

──最終ホールは4.5メートルのスライスラインのバーディーパットが残りました。このとき、自分の順位は分かっていましたか。

12番くらいでスコアボードを一度見たとき、首位と1打差か並んでいたかでした。まさか上位の人たちが落としているなんて考えてもいなかったので急にプレッシャーがかかって、次のホールのティショットを曲げてしまいました。ですから、そこからずっと見ないようにして、18番グリーンに上がってきたときにもう一回確認したら、首位が伸びていないので「ええッ!?」と思って。もしこれを入れればチャンスがあるかもしれない、これはしっかり打たなきゃ、と思いました。

──ラインははっきり見えましたか?

入りそうな感じはしましたが、しっかり打てるかな? と思いました。しっかり打てたら入ると思いましたね。その週は特に気合を入れてパッティング練習をやってきたので、練習量だけは誰にも負けないと思っていました。練習は自信につながります。やっぱり最後はメンタルですね。

──最後のバーディーパットが入った瞬間は?

残りの組を待たなければならない状況だったので、優勝の確信はありませんでした。ただ、この日自分が目標にしていた3アンダーで回れたという満足感が大きかったです。それに、プレッシャーがかかった場面でもしっかり打てて決められたということも良かったです。

メジャー大会となると「獲りたい、優勝したい」という気持ちが強くなりますが、昨年はその前週に優勝争いして勝てなかったことがいい方に作用したかなと思います。久しぶりの優勝争いだと力が入って空回りするだろうし、前の試合で勝っていたら自信が出てまた勝ちたいという気持ちが強くなる。負けていたことでいい意味で力が抜け、優勝にこだわらず最終日にもスコアを伸ばすことだけを考えることができました。これが良い結果につながったと思います。

──初優勝も同じ女子プロ選手権でした。2度目のメジャー優勝は初優勝のときと違いましたか?

少しは成長したかなと思いました。初優勝のときは最終日にあまり伸ばせなかったし、16番も最終ホールもボギーを打っていました。昨年は上がり3ホールでボギーを打たなかったし、最終ホールはバーディーもとれた。かなり粘り強く戦えるようになったと思います。

──今大会は連覇、そして3度目のメジャー制覇を目指すことになりますが?

あまりディフェンディングということを意識しないようにしています。メジャーだからと無駄に練習量を多くしたり、全部完璧を目指してこだわりすぎたりすると失敗します。他の試合と同じように、試合前の準備をいつも通りにできればいいかなと思っています。あまり気負い過ぎずに。

──今大会は50回記念大会で、かつ震災復興の意味も込めて岩手での開催です。ファンへのメッセージを。

昨年10月に発生した鳥取県中部地震で被害に遭われた方々に、今年初めて賞金の一部寄付させていただきました。私が鳥取県の高校に通っていたという縁があったからです。今大会でも東北のファンの皆さんのために、何か私にできることがあればいいなと思っています。そういう意味も込めていいプレーをお見せすることはもちろんですが、優勝してその賞金の一部でも寄付できればいいなと思っています。

──今後、どんなプロゴルファーを目指しますか?

実力があるのはもちろんですが、皆さんに応援したいと思われるような選手、見ていて楽しいと思われるような選手になりたいです。私のスタイルはパッティングをしっかり打てることだと思います。パッティングは届かないと入らないので、しっかり打つことはいつも心がけています。ボギーも多いですけど、バーディーもあることでお客さんにも喜んでいただける。攻めるゴルフをしていきたいです。

──今年は賞金女王のチャンスもありそうですね?

あまり考えていなかったのですが、皆さんにそう言っていただくことが多くなり、こういうチャンスはめったに来ないと思うので、しっかり狙いたいなと思います。先日も、今大会のコースセッティングを担当する岡本綾子さんから「今年は賞金女王になれるチャンスだから頑張りなさい」と激励されました。いつもはホメていただくことも少ないのですが、岡本さんにそう言っていただいてすごくうれしかったです。期待していただいているので、なんとかそれに応えたいですね。特にシーズン後半は好きなコースが多いので、頑張りたいと思います。