<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>
 言葉にすることは簡単でも、実行することは難しい。元サッカー日本代表で、J1ガンバ大阪で活躍するベテランの遠藤保仁の口癖に、「あす、できるはバカ野郎だ」がある。ルーキーキャンプ2日目を終え、笑顔で「ありがとうございます」と、スタッフへあいさつを繰り返す新人プロが、田村亜矢だった。

「早朝から食事などの用意を万端整えて、選手を出迎えてくださる。今回、トーナメントのスタッフとして働き、改めて感謝の気持ちを忘れるな、と自分へ言い聞かせました。だから、私は試合へ出場したら、笑顔で皆さんにありがとうといえる選手になろう。早速、実践したわけです」

今年、最終プロテストで合格。2度目の受験だった。「小学3年で全日本小学生ゴルフトーナメントの北海道大会で優勝。結果を出すことは、こんなにうれしいものなんだ。プロを目指すことを決めたのはその時。でも、今年ダメだったら、プロになることはあきらめようと考えていた。ズルズルと引きずっていても仕方がない。人生は長いし、家族へ負担ばかりをかけるわけにはいきません」と明かす。

今年4月、生活をさまざまな角度から見直した。「1日は短い。どうしたら、時間を有効に使えるかを考えた。人が眠っているときから活動をすればいい。毎朝4時に起きて、午後4時ぐらいまで練習。その後、フィジカルトレーニングをすませば、寝るまで有意義な時間を過ごすことができる」。練習の総時間などは以前と変わりはないが、自身が感じる充実度が明らかに違った。早起きが得意は、プロゴルファーの大事な資質。今回、ルーキーキャンプは、「朝が早いからつらい、と人づてに聞いていた。でも、早起きは全く苦になりません。けさも午前3時に起きて、体を動かし、ゆっくりと朝食をいただきました」という。

父、文則さんのすすめでゴルフを始めたのは7歳。「それまで、おけいこ事をしたことがない。とても楽しかったのを覚えている。一番の魅力は音。ボールにクラブヘッドが当たる時や、スイングなど、それまで耳にしたことがない音が心地よかった」と、うれしそうに語った。家族は両親と姉2人、兄と弟の7人。ただし、もっかゴルフをしているのは田村だけだ。「自分でいうのもおかしいけど、とても家族仲がいい。しかし、ゴルフはお金のかかるスポーツですね。私の夢のため、6人が協力してくれた。プロになる、なんていわなければ、家族旅行ができたかもしれない。離れ離れに暮らすこともなかった」。

実家は北海道。だが、現在は宮城県で暮らしている。文則さんは臨床検査技師だったが、愛娘をサポートするため、仕事を辞めた。「父の人生を犠牲にしたのかもしれない」とポツリといったものの、すぐさま笑顔に。なるほど、素晴らしい家族環境で成長してきた-そんなムードがある。プロ初戦は主催者推薦で出場した北海道meiji カップだった。プレッシャーのかかる予選を突破して、32位タイ。次戦は9月22日に開幕するミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメントへ出場する。利府ゴルフ倶楽部は自身のホームコース。「ずっと、練習をさせていただいています。悪い土に種を植えても、良い土に種を植えても、努力をしなければ花が咲きません。私が結果を出せば、みんなが笑顔になる。そう信じています」。

宿舎での自由時間、ソッと部屋を抜け出したのは素振りを行うためだ。ルーキーキャンプとはいえ、周囲はすべてライバル。時間を有効利用する。